概要

  • 「セルドロン」とはリサイクル紙(紙粉やシュレッダー屑)を微細加工した、天然高分子(セルロース)が主成分の微細繊維で構成されている粉末状の瞬間吸水材です。
  • 微細セルロース繊維の平均粒径は300μm以下であり、セルドロンはその繊維が絡み合った特殊構造を有しています。
  • 吸水能力としては、「セルドロン」自身の質量の4~7倍の水を瞬時に吸水します。
  • 「セルドロン」は化学反応を伴わずにセルロースの特殊構造と吸水を主とした物理作用により改質を行います。つまり、対象土壌の組成を問わない「汎用性」「即効性」「簡便性」「低環境負荷性」の特性により、添加・撹拌するだけで流動性を即座に低下させます。
    また、添加後の泥土を加圧することにより、更なる「減容化」が可能です。
  • 当社は京都大学と株式会社グロースパートナーズと共同で「セルドロン」について開発を進めています。

「セルドロン」のメカニズム「セルドロン」のメカニズム

「セルドロン」の電子顕微鏡写真「セルドロン」の電子顕微鏡写真

特徴

1. 汎用性

  • 「セルドロン」による高含水泥土の流動性低下メカニズムは、微細セルロース繊維による吸水を主とした物理作用であり化学反応を伴わないことから、対象土壌の固相が有機物か無機物、液相が水か有機溶媒であるかを問いません。また、液相に電解質等が溶解している場合でも、種類や濃度を問わず使用できます。
  • ダム湖やため池の浚渫工事の他、河川・海洋浚渫工事、建設汚泥、土砂災害対策等、あらゆる高含水泥土に本技術の活用が期待できます。

2. 即効性

  • 化学反応によるセメント系固化材等と異なり養生期間が不要であり、所要の効果を得るまで短時間で処理できます。
  • 現場で即時に効果を確認できます。

3. 簡便性

  • 作業は、「セルドロン」の添加、混合、撹拌のみであり、複雑な手順は不要です。
  • 即時に効果を確認出来るため、現場で、少量ずつ添加・撹拌し添加量を決定することもできます。

4. 低環境負荷性

  • 主原料が古紙のため、pHは8前後の中性域であり、添加後も変化しません。
  • 化学反応を伴わないため、副生成物が発生しません。
  • 主成分のセルロースは時間経過とともに微生物分解され、土に戻ります。

京都大学との共同研究

瞬間吸水材セルドロン基本物性とメカニズムから建設汚泥や高含水泥土への運搬性やため池等浚渫土砂の再利用するため、2016年11月より京都大学と株式会社グロースパートナーズ、当社による共同研究を実施しております。

第1期 2016年11月~2017年5月 の研究

セルドロンの地盤工学的物理特性や規格化について、基礎的検証が完了し流動性の高い高含水泥土に添加・攪拌するだけで即座に流動性を低下させる特性と効果を有する以下の4点を確認しました。

  1. セルドロンは主成分とするセルロースが質量の約4~7倍の吸水能力があること。
  2. 吸水量は嵩密度と相関がありおおよその吸水能力を簡便に推定することができること。
  3. セルドロンによる高含水泥土の改質原理は、セルロースの吸水とともに、セルドロン繊維によるせん断力の強化によるものであること。
  4. セルドロンの混合攪拌による不飽和度の増加も強度発現に寄与し、対象泥土の化学組成を問わずに改質効果を得ることができること。

2017年6月 京都大学吉田キャンパスにて「セルドロンによる固液混合体の流動化低下のメカニズム及び時効変化について」の発表会開催

京都大学大学院 木村 亮 教授による開会あいさつ京都大学大学院 木村 亮 教授による開会あいさつ

澤村 康生准教授による研究成果発表澤村 康生准教授による研究成果発表

第2期 2017年6月~2018年5月 の研究

建設工事で発生する建設汚泥や、浚渫土砂、軟弱土、ため池底泥などの高含水泥土は直接盛土として利用、運搬することができず従来の処理方法は乾燥処理、脱水処理、固化処理が必要であるが、いずれも大きな仮置き場や大きな施設、重機、周辺地盤とのなじみの悪さ、環境への影響の問題があったため、セルドロンを泥土に混ぜた時の強度特性と運搬性について研究し、以下の4点を確認しました。

  1. 運搬が難しい含水比200%を超える高含水泥土でも微細粉体を添加することにより強度が増加し処理が可能なこと。
  2. 運搬が難しいコーン指数200kN/m2以下であってもフロー値が計測できる程度に流動性が低下していれば泥土運搬が可能なこと。
  3. 微細粉体を添加した泥土は、長時間の加振でも水がほとんどでないこと。
  4. 泥土の初期含水比が分かれば、フロー値を基に泥土を運搬可能な状態にできる微細粉体の種類と添加量を算出できること。

セルドロン添加量別試料セルドロン添加量別試料

フロー試験状況フロー試験状況

セルドロンの多様な性能

ため池機能を回復するために溜まった泥土の改質

  1. 添加・混合
    セルドロンは混ぜるだけで効果が確認できるのでバックホウ等の汎用機械で簡単に混合することが可能。

    添加・混合

  2. 改質土を運搬
    セルドロンは即時に高含水比土砂の 流動性を低下させることができるの ですぐにダンプでの運搬が可能。

    改質土を運搬

  3. 田畑へ利用
    セルドロンの特徴の一つであるアルカリ生成物が生じない低環境負荷性によって田畑等で利用することが可能

    田畑へ利用

造成現場にて調整池に溜まった泥土の改質

造成現場では降雨により流れ出る泥混じりの水を直接、河川や下水などに流れないように、調整池を設けて泥を沈降させて溜めます。この堆積した泥は搬出するのですが、水を多く含み運搬が困難なためセルドロンを添加することにより水分を吸収することで運搬が可能な状態に改質します。

  • 福島県内造成工事現場
    2017年5月 福島県内の造成現場にて調整池の浚渫土での改質効果の検証しました。

    改質前の浚渫土はスランプ24cm改質前の浚渫土はスランプ24cm

    セルドロンを添加混合した改質後はスランプ0cmセルドロンを添加混合した改質後はスランプ0cm

  • 混合攪拌機械によるセルドロンによる改質試験

    2019年7月 岡山県内の造成現場にて調整池に堆積した泥土を混合攪拌機械「マゼレー」とセルドロン供給装置によりセルドロンを機械混合しました。粉じんの発生を抑え、均質に改質できました。

    2020年1月20日 千葉県内の造成現場にて自走式土質改良機「SR-G2000」によりセルドロンの混合攪拌時の粉じんの発生を防止し均質に改質土できました。供給装置を一体化した土質改良機は効率が良くい,リース供給もされていますので工事現場での利用に適しています。

建設現場で残った生コンクリートの処理

  • 生コンクリートの打設にポンプ車を使用することが多く、打設後に必ずポンプ車のホッパ-内に0.3m3ほどの生コンクリートが残ります。
    この生コンクリートは数時間後には硬化してしまうため、重機やハンドブレーカーで破砕し、場外へ搬出するのが一般的ですが、硬化前にセルドロンで生コンの水分を吸収し砕石状にすることで破砕作業を無くすことができます。

災害復旧での利用 【土砂崩れで流入した泥土の撤去】

  • 2017/9/21、熊本県内の建設中だった立野ダム仮排水トンネルが熊本地震で発生した土砂崩れとその後の大雨により建設中のトンネル内に大量の土砂が流入しました。トンネル工事を進めるうえで土砂の撤去が最優先であり、運搬の困難な高含水泥土はセルドロンにより運搬可能な状態に改質して効率的な撤去・搬出し、工事を再開する事ができました。

トンネル坑口被災・砂流入状況トンネル坑口被災・砂流入状況

トンネル内に堆積した高含水泥土トンネル内に堆積した高含水泥土

スランプ試験24cm(積込運搬が困難)スランプ試験24cm(積込運搬が困難)

セルドロン混合攪拌状況セルドロン混合攪拌状況

スランプ試験7cm(積込運搬が可能)スランプ試験7cm(積込運搬が可能)

改質土搬出状況改質土搬出状況

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